<受賞者の声>

東京都知事賞 井上貴絵 「雪降る音」(日本画)

 まずは、私の作品にこのような上位の賞を与えて下さった、選考に携わる諸先生方に、厚く御礼申し上げます。
私は昨年、初応募にて佳作賞を頂き、二回目の新日美展で東京都知事賞が頂けるとは、嬉しいのは勿論のことそれよりも先に驚きました。
新入りに対しても作品を高く評価して下さる、貴協会の特性が宣伝されれば、若手美術家の入会希望が増えることと思われます。
貴協会が益々活力に満ち発展される事をお祈り申し上げます。

 話は変わりまして、私の今作品に対する思いについて書かせていただきます。
講評の先生からお褒め頂いた題名「雪降る音」、これは、北国雪国生まれの人々の郷愁をつく功を奏したように思われました。
長野人の私にとって、雪が降る音とは「シャカシャカシャカ・・・」。例えば、かき氷機の下の受け皿に削られた氷粒が落ちて当るようなじと表現いたします。

 真冬、クリスマスや正月の季節になると、深夜や明け方早朝の生活音が少ない時刻に、このシャカシャカシャカという音がするような気配を感じた翌朝、
一面は銀世界になっています。

 新雪を踏むとキュッキュと砂のように鳴き、二月下旬になれば春が近い陽射しに溶けた雪が屋根から落ち、ドッスン、バッタンとうるさい。
このように雪は賑やかなものなのです。

 作画制作が佳境に入るころは真夏で、長野は夏も涼しいイメージに思われがちですが、
人が住んでいる所は暑い!連日三十五度C前後の猛暑で、他の関東地域の都市と同じです。
夏休みに遊びに来ていた姪から「早く描き上げないと雪が溶けちゃうよ!」とひやかされました。

 このように描きたいものを好きに描いている私ですが、このスタイルは変えずともまぐれで賞を取った作家などと後で言われないように
衿を正して画業に励みたいと思います。皆さんよろしくお願いします。